『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』 群馬映画研究会 新作映画批評 ネタバレあり

あらすじ(ウィキペディアより)

イラク戦争末期、特殊部隊「Aチーム」ことアルファ部隊のメンバー4人は「バグダッドで活動するゲリラが巨額の金と『USドル紙幣の原版』を持って逃亡しようとしている」という情報から上官の命令でゲリラを討ち、原版を手に入れた。しかし直後に上官は爆死し、原版は何者かによって持ち去られてしまう。Aチームは、何者かによって、上官殺害と原版横領の罪を押し付けられ、特別刑務所での10年間の懲役を言い渡される。しかし、4人は脱獄。当局の追跡をかわしながら、自分達をハメた黒幕に迫っていく。

能天気で明るい80年代を代表する海外アクションドラマを21世紀に蘇らせた長尺劇場版。小学生のころ土曜の学習塾に通う前に観るのが大好きだったこの作品をまさか劇場の大スクリーンで観ることになろうとは。ほんと長生きはするものだ。それで作品評価が高ければ最高なのに。世の中、そんなに甘くない。

予告編そのままにアクション演出が大スクリーン向けになってド派手で豪快。まるで一番いい席で花火を見ているかのようだ。しかし物語の緊張感が持続せず、中盤は場面展開が早くなり、面白くなるはずのサスペンス要素を混乱させているだけなのが残念。80年代のドラマのイメージが強すぎて、舞台設定が米軍撤退間際のイラクというヘンに現代的になっているので嘘をつきずらくさせてしまっているのかも。また、リーダーであるハンニバルよりフェイスが目立っているのが往年のファンにはちょっと違うんじゃない?!って気持ちにさせる。

'The A-Team' Behind The Scenes Images

最初のオープニングの4人が揃うシーンは本当にワクワクして、疾走感も素晴らしく最高のスタートをきったはずなのに、メキシコから8年後のイラクに設定が移ってからはワクワク感が薄れていくばかり。最後は、この作品の醍醐味であるスカッとするアクションで持ち直したのが救い。

The A-Team Movie Releasing Shortly

エンドロール後に席を立たなかった人だけにサービスシーンがあるが、本編とまったく関係ないサービス。往年のファンに向けた続編的なお祭り要素と新しいファンを開拓しようという意欲との狭間で揺れ動く物語はどうもチグハグに映り、最後までノリの悪いまま。単純かつ爽快なアクションを期待するほど悪評へ傾くのは仕方ないのかも。物語る上で面白要素を活かしきれていないのが至極残念である。

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特攻野郎Aチーム THE MOVIE - goo 映画
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『ヒックとドラゴン』 新作映画批評 ネタバレあり 群馬映画研究会 

HTTYD feature

前田有一氏の『超映画批評』で絶賛されていたドリームワークスのCGアニメーション映画『ヒックとドラゴン』を観賞。噂にたがわず今夏の大穴にして大本命。恐竜トゥースのデザインが馴染めなくて、敬遠している方もいるかもしれないが、とにかく映画館に出掛けて体感してくれ!僕はユナイテッドシネマ上里が2D版しかやってくれなかったので、しかたなく2D版で観てしまったが、遊園地のライド的な面白さを多分に含んでいる作品なので間違いなくおすすめは3D版。

トイ・ストーリー3』も確かに恐るべき完成度とシリーズ最終作のラストに涙を誘うが、こちらはバイキングの少年成長物語であるので単純明快。それでいて小さい子供から大人のカップルまで楽しめる間口の広さ。とにかく実写と遜色ない背景美術が素晴らしすぎて、ため息が出るほど(とくに光と影まで計算したライティング効果)。また縦横無尽に画面を飛び回るアニメーションの動きに最初から最後まで釘づけで、大興奮。

ゾワゾワと3度鳥肌が立った。一番最初にトゥースにまたがり大空を駆けるシーンは、この映画のベストオブベスト。急旋回や急降下など手書きアニメーションでは表現できなかったアングルからのスピード感にしてやられた。また忘れてならないのがトゥースにヒックが触れようと手をのばすシーンは、E.T.のあの有名なシーンを彷彿させる感動がわきあがる。

正直、宮崎駿リスペクト的な部分も見受けられるが、全盛期からパワーダウンが否めない本家スタジオジブリを越えたアニメーションといっても差し支えないでしょう。ジブリもうかうかしてると足元すくわれるよ。

HowToTrainYourDragon_03

ここから先は衝撃のネタバレになりますので、これから見る人は観てから読むように。

最後、少し大人びた表情になるヒック。しかし、彼は世界を救った代償に左足を失ってしまう。これはかなり観客にとってもショッキングなシーンである。お調子者で軽口を叩いていたヒックから奪ったのが身体の一部とは・・・。ヒックが救ったのが傷ついて飛べなくなったトゥースであり、トゥースが命をかけて救ったのが人間的に成長したヒック。たぶん、ディズニーやピクサーのアニメーションとの決定的な違いが、この毒気を含んだシーンが“あるか”“ないか”でないだろうか。小さい子供と何か一本見るならこれ以外考えられない。夏休みの忘れられない映画体験におすすめ!!

ヒックとドラゴン

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ヒックとドラゴン ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]

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電脳シネマ塾 第24回『トイ・ストーリー』

toystory

あらすじ(ウィキペディアより)

カウボーイ人形のウッディは、古めかしいおしゃべり人形。背中の紐を引っぱると、パンチの効いた「カウボーイトーク」を聞かせてくれる。そんなウッディはアンディ少年の大のお気に入りで、彼は毎日のように、いろいろなオモチャを取り混ぜながらカウボーイごっこに興じるのだった。

そうしてアンディが楽しく遊ぶオモチャたちだが、実はとても大きな秘密があった。彼らは実は生きていて、話したり自由に行動したりできるのだ。しかし、それを人間に知られてはいけないというのが「オモチャのルール」だった。ウッディは、そんな彼らのリーダーを努めていた。

そして、今年もアンディ少年の誕生日がやってきた。オモチャ達はこれから共に過ごすことになる新顔に興味津々だが、ウッディの気持ちは落ち着かない。「新しいオモチャがアンディのお気に入りに成れば、自分はお役ごめんになってしまう」、そう考えると気が気では無かったのだ。ところが、そんなウッディの心情をよそに現れたのは、最新の宇宙ヒーローキャラクター・ハイテクトイのバズ・ライトイヤーだった。 「デジタル録音で喋る!光る!カッコイイ!!羽根まで飛び出し、仕掛け満載!」 正に技術の粋を結集したようなバズに、アンディは案の定夢中になってしまう。また、あまりの精巧さにバズ自身も自分が本物のスペースレンジャーだと信じて疑わず、「宇宙船が壊れた!」と言って自分の入っていた空き箱を修理しようとしたり、飛行能力を証明するため高みから飛び降りたりする。これにはオモチャ達までが心を奪われてしまう。

そんな中、ディヴィス家が引っ越すという新たな問題が持ち上がる。荷物にうっかり紛れ込んだら最後、他のガラクタと一緒に忘れ去られてしまう。そこで彼らは引越しに向けた仲間作りを始めるが、その騒ぎの最中、バズがアンディの部屋の窓から転落するという大事故に見舞われる。

一方ウッディは、アンディに連れられて「ピザ・プラネット」というレストランに連れて行かれる途中、二人を付けてきていたバズに会い喧嘩となり、夢中になるうちガソリンスタンドでアンディとはぐれてしまう。必死に彼を追う二人だったが、道すがら、「オモチャ殺し」と称される隣家のシドに発見され連れ去られてしまう。彼はどんなオモチャも決して大切にせず、犬をけし掛けて噛み付かせたり、花火を設置して吹き飛ばしたり、さらには妹の人形までを取り上げて改造するといったとんでもない遊び方をする少年だったのだ。

もうすぐアンディが引っ越してしまう!慌てたウッディは、自らの素性を図らずも知ってしまったことで茫然自失のバズをつれて脱出を試みるが、「バズを殺し(壊し)た!」と仲間に誤解されそれを妨害されてしまう。 絶望したウッディだったがバズを元に戻したシドのおもちゃたちと協力し、シドを改心させシド家を脱出し、ディヴィス家の引っ越しトラックからラジコン・カーを取り出しバズを助けにいくが仲間にまたもや誤解され、見捨てられてしまう。シド家でもらったマッチも切らし、絶望した。そこでバズがあるアイディアを出す。そのアイディアとは・・・

今では珍しくなくなったフルCGで描かれる長編アニメーション映画のパイオニアPIXARスタジオの看板的存在『トイ・ストーリー(1995年劇場公開版)』を鑑賞。本編81分。人間が知らないオモチャたちの滑稽で悲しく驚きに満ちた日常に、笑ったり感動した。彼らは子供たちの手加減のない扱い方におびえたり、新しいオモチャが来ることを心配したり、人間たちの行動に一喜一憂しながら暮らしている。最近観た借りぐらしのアリエッティなども基本設定は同じ。本来は不可侵の人間の世界と小人(この場合はオモチャ)の世界が交わることによって生まれた物語。中にパート3の予告編が入っていたが、15年の歳月がもたらした映像技術の進歩にため息。ウォーリーやカールじいさんを先に観ている人なので、リアルタイム評からはどうしても評価が落ちざるを得ないが、95年当時でこのクオリティですから熱狂的に受け入れられたのは分かる気がする。とくに最後の最後バズの背中に巻きついた花火を使って空を飛ばせる演出がすごい。しかもアンディの乗った車に着地させるのはさすが。

トイ・ストーリー(1995) - goo 映画
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2010年映画鑑賞ランキング 上半期まとめ

2010年はタイトルだけ眺めても興奮してくる超強力な布陣。

1位:AVATAR/アバター3D版

2位:ヒックとドラゴン

3位:息もできない

4位:インビクタス/負けざる者たち

5位:トイ・ストーリー3

6位:第9地区

7位:シャッター・アイランド

8位:インセプション

9位:シャーロック・ホームズ

10位:プレデターズ

11位:借りぐらしのアリエッティ

12位:運命のボタン

13位:カールじいさんの空飛ぶ家

14位:告白

15位:特攻野郎Aチーム

13位:Dr.パルナサスの鏡

14位:フローズン・リバー

15位:アリス・イン・ワンダーランド3D版

16位:ラブリー・ボーン

17位:マイケル・ジャクソン This is it

18位:サロゲート

19位:エアベンダー

電脳シネマ塾 第23回『ガチ★ボーイ』

先日ブックオフで中古DVDをさらに50%オフで500円で販売したときに購入した映画『ガチ★ボーイ』を鑑賞。サエコ可愛いな、ダルビッシュに激しく嫉妬。学生プロレスを題材にした笑いあり、涙ありの青春!熱血映画。原作は舞台劇『五十嵐伝〜五十嵐ハ燃エテイルカ〜』、佐藤隆太主演。

ガチ☆ボーイ【ガチンコ・エディション】 [DVD]

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あらすじ(ウィキペディアより)
学生プロレス団体HWAは北海道学院大学のプロレス研究会だが、前チャンピオンのドロップキック佐田が引退して以来、盛り上がりのない試合が続いていた。そんなある日、大学一の秀才として有名な五十嵐が入部してくる。「マリリン仮面」のリングネームとマスクを与えられた五十嵐は熱心に練習に励み、あらゆる事をメモするが、どこか普通の人と違うことにHWAの面々は気づき始める。五十嵐はプロレス特有の「お約束」や「段取り」が覚えられず、どの試合も真剣勝負の「ガチンコ」になってしまうのだ。実は五十嵐は事故により、眠ると事故以降、その日までにあったことを全て忘れてしまう「高次脳機能障害」になっていたのだ。将来に絶望し、生きる実感を失いつつあった五十嵐は、HWAの試合を見て学生プロレスに感動したことを思い出し(事故以前の記憶状態は普通の人と同じ)、頭では忘れても身体は覚えてるはずと新たな道を切り開くべくプロレス研究会の扉を叩いたのであった。 徐々に人気の出てきたマリリン仮面を叩き潰そうと学プロリーグのチャンピオン選手チームがHWAとマリリン仮面を挑戦者に指名してきた。五十嵐ことマリリン仮面はまさに一生に一度の思いでチャンピオンに立ち向かうのであった。

眠ると記憶がデリートされる同系列の映画で『パコと魔法の絵本』と比較される『ガチ★ボーイ』。前者がブラックなおとぎ話とするならば、こちらは熱血スポ魂もの。前半は明るくコミカルなタッチだが、後半は一転涙をこらえるのに苦心するシリアスな展開。記憶がなくなる病気に負けず、仲間と学生プロレスに真剣に取り組む五十嵐の姿に胸を打たれる。最後の佐田先輩直伝のドロップキックが決まる瞬間が素敵過ぎる。サエコ演じる朝岡麻子にバスの中で告白するシーン(実は4回目、フラれたのは2回目)がせつない。泉谷しげるが銭湯で働く寡黙な父親を好演。プロレスに思い入れのある人ほどラストは号泣必至。観終わった後さわやかな気持ちになり、明日も頑張ろうという生きる勇気がわいてくる1本。おすすめ。

『インセプション』クリストファー・ノーラン監督×レオナルド・ディカプリオ主演 最新作3日間限定先行上映観賞レポート 新作映画批評 群馬映画研究会課題映画 ネタバレあり

Inception Movie Poster

今夏もっとも楽しみにしていた映画『インセプション』3日間限定の先行上映に東京で遊びまくって疲れた体で挑んだ。劇場は109シネマズ高崎。レイトショーにかかわらず6、7割埋まっていた。ただし、小さなスクリーン。物語は冒頭から、観客に夢と現実の行き来を強いるため、難解で多重構造の様相を呈している。映画公開時期から数か月でソフト化、映画を何度も見るという行為が当たり前になっている今、すべての内容が理解できずとも鑑賞するたびに新しい発見がある映画があっていいと思う。この映画、2度3度、人によっては4度ぐらい見ないと内包しているテーマや登場人物たちの台詞の意味を汲み取ることができないと思える。そのくらい台詞に込められたひとつひとつの意味や1カットごとの画面密度がハンパない。久しぶりの骨太で超重量級映画。正直、私ですら前知識なしで挑んで1度の観賞では物語の6、7割程度の理解しかできなかった。

Inception

あらすじ(ウィキペディアより)

主人公のドム・コブ は、人の脳内に存在する潜在意識に入り込むことでアイディアを"盗み取る"特殊な企業スパイ組織の一員である。コブは妻モルと共に夢の中へ幾度となくダイブし、潜在意識の深い階層で妻と二人きりの時間を楽しんで暮らしていたが、その生活は夢と現実の判別を困難にしてしまい、現実世界における表在意識にも大きな影響を与えかねない危険な行為であった。現実世界の数時間が数十年にも感じてしまう深い夢の中でとったコブのとある行為は、結果として最愛の妻を死に追いやってしまった。これにより、コブは妻殺害の容疑の為に家に2人の子供を残しての逃亡生活を余儀なくされる。また、このことにより大きな罪悪感に苛まれたコブは、夢の中に自身の罪悪感が投影されて生まれた妻モルの幻影により苦しめられることとなる。 罪悪感に苛まれながらもスパイとして働いていたコブのもとに、斉藤(劇中表記は「サイトー」)という大企業のトップであり強大な権力を持つ日本人が現れる。コブと相棒のアーサーは彼から仕事を依頼される。依頼内容はライバル会社の解体と、それを社長の息子ロバート・フィッシャーにさせるようアイディアを"植えつける(インセプション)"ことだった。困難かつ危険な内容に一度は断るものの、妻殺害の容疑をかけられ子供に会えずにいるコブは、犯罪歴の抹消を条件に仕事を引き受けた。

サイトーに仲間を集めるよう指令を受けたコブは、義父の教え子で建築学を学ぶ優秀な学生であるアリアドネを「設計士(夢の世界を自由に構築する)」、個の戦闘力にも長け心理戦も得意とするイームスを「偽装士(他人になりすましターゲットの思考を誘導する)」、街で怪しげな薬局を開業しては様々な人に鎮静薬を処方しているユスフを「調合士(夢の世界を安定させる鎮静剤を作る)」としてそれぞれメンバーに加え、これにアーサー、斉藤を加えた6人で作戦を決行した。飛行機内で眠るロバートの夢の中に潜入したコブ達は、ロバートを拘束した矢先に手練の兵士たちによって襲撃を受けてしまう。これはロバートが企業スパイに備えて潜在意識の防護訓練を受けており、ロバート自身の意識が護衛部隊を夢の中に投影させていた為であった。インセプション成功の為に更に深い階層の夢へと侵入していくコブたち。次々と襲い来るロバートの護衛部隊に加え、妻モルまでもが妨害を始めた。さらに曖昧になる夢と現実の狭間、迫り来るタイムリミット…果たしてインセプションは成功するのか。

この映画は、夢の中へ深く深く潜って帰ってくる話。夢が壊れていく描写に重きを置いているため、色々考えさせられる。映画『ダークナイト』で時の人となったクリストファー・ノーラン監督は見たことない無重力でのド派手なアクション、キャラ立ちしている魅力的な登場人物たち、哲学的なテーマを盛り込んだ難解な台詞、巧妙に張り巡らされた伏線を見事に融合させた。

気付いた点

■冒頭のシーン。階層に潜って順々に眼がさめていく描写がいまひとつ飲み込めなかった。サイトーが出てくるシーンで、いきなり日本語出てきて、また英語になるし。
■夢に潜る練習のシーン。予告編に投入されたのがこの辺。次々に街が壊れ、街が反転したり、大スペクタクル。
■夢に囚われたモルを現実に戻そうとコブはインセプションしていた。それが引き金でモルは現実と夢の区別がつかなくなり自殺。コブは自責に悩まされる。
■エレベーターで地下に降りたアリアドネがモルに合う場面で発狂していたモルは潜在意識の偶像化
■サイトーを虚無から連れ戻す際の描写が唐突な感じがしたが、あれはなんで?
■ラストシーン。子供たちに会えることになり、家に戻ったコブ。しかし、くるくるコマが回っていた。あれは夢?現実?

Inception Movie

密度が高く1度の視聴では理解できないため、最初に見た際の評価は割れるだろが、間違いなく10年代の映画史にその名を刻んだ大作と呼べるだろう。

【関連リンク】
インセプション

スタジオジブリ最新作映画『借りぐらしのアリエッティ』 新作映画批評 ネタバレあり 群馬映画研究会課題映画

真夏の悪夢『エアベンダー』の感想を先に書いてしまいましたが、スタジオジブリの最新作『借りぐらしのアリエッティ』も公開初日に観てきました。映画館はジブリの新作ということもあり、朝から親子連れで混雑。


あらすじ(ウィキペディアより)
小人の少女・アリエッティは、郊外にある古い屋敷の床下で、人間の生活品を借りながら、両親と密かに慎ましく暮らしていた。そんなある日、その屋敷に引越してきた少年・翔に自分の姿を見られてしまい…。

最後のアリエッティとの別れのシーンにはきっと胸を熱くする人もいるであろう。全体的に起承転結がハッキリとしている良作(瑠沙は涙こらえきれず号泣)で、避暑地に病気療養に来た心臓の手術を控えた少年と借り暮らしでひっそりと生きる小人の少女との禁じられた出会い(恋愛感情にも近い)をひと夏の思い出として描いていく。初期の宮崎駿作品のカラーに近く、絵で見せることに終始し説教臭くないのがよろしい。翔が語る最後の台詞は鳥肌ものの恥ずかしさなので、赤面するか涙するかは観ている人の感性によると思う。

全体的に文句を言うレベルではないが、同じジブリ作品でも宮崎駿監督と他の監督を立てた時の決定的な違いは冒頭からの推進力の差。宮崎駿監督の作品はとにかく冒頭の立ち上がりが早く、物語が加速度的に面白さを増していく。『借りぐらしのアリエッティ』は全体的に94分という劇場からも歓迎される回転率の良い映画でありながら、“人間に見られてはいけない”という小人の掟が邪魔をして、アリエッテイと翔がきちんと出会うまでに時間を割いているので、前半部分の盛り上がりが少ないのと、ジブリ作品全般に言えるのですが声優を職業としている人たちを毛嫌いして起用していないので一部の役者の台詞が聞きとり難い。あと観ているときは音楽のつけ方が一辺倒のような気がしたが、そこはあまり気にしなくてもいいかも。逆にオープニングで役者の名前が出るのが気に入らなかった。あれは夢を壊すので罪。せっかく俳優を起用しているのだから『えっ!、あの人があの役で!!』と最後までお楽しみはとっておいて観客を驚かすほうがよかったのでは?!もったいない。

ジブリ独特のパステル調の溶け込むような背景画は全編にわたって美しく、カラスや猫など動物描写の細やかさや人間と小人の対比などジブリ生え抜きのアニメーターで最年少監督の座を射止めた米林監督の手腕はさすがと唸った。エピローグ付きのエンディングに流れる協力スタジオには、『エヴァンゲリオン』のガイナックス、『カウボーイ・ビバップ』のボンズなどの名前も・・・、最後まで子供を退屈させず席を立たせない絵力と工夫は見事。

あと、超個人的にアリエッティのイラストが瑠沙に似すぎているのが笑えた。次世代のジブリを知る意味でもおすすめです。

【関連リンク】
借りぐらしのアリエッティ公式サイト

ルパン三世「カリオストロの城」 [Blu-ray]

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師匠が輝いていたころ 

借りぐらしのアリエッティ - goo 映画
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