映画 ザ・タウン 新作映画批評 久々に手に汗握るクライム・サスペンス ネタバレあり

The Town movie review - www.WatchOnlineMovie.co.uk

情報量過多なクライムサスペンス映画『ザ・タウン』。銀行強盗を繰り返す窃盗団一味をテーマに、犯罪件数が多いボストンという街が抱える“闇”を多重構造的な物語で描く作品。上映時間2時間15分が“あっ”という間に感じられるほど、情報密度が濃く、1800円払う価値があると感じた。この映画の監督であり、主演したベン・アフレックの再評価は間違いない。

あらすじ(ウィキペディアより)

年間300件以上の銀行強盗事件が起こる街、ボストン。ダグはそこで幼馴染たちと共に結成した銀行強盗団のリーダーをしており、自分の行いに信念を持っていた。しかしある日、ダグが襲ったとある銀行の女性支店長クレアに出会ったことで彼の心が揺らぎ始めた。一方でFBIのアダムによる捜査が強盗団に忍び寄る。

The Town Movie

最初の銀行強盗シーンからタイトルに至るまでのヒロイン クレアとのファースト・コンタクトのシークエンスはまったく無駄なカットがなく、物語上重要となる幾つかの伏線(クレアが通報するのを知りながら見逃すダグの冷静且つ鋭い観察眼や犯罪を犯しながら危害を加えようとはしない彼に残る正義感、ジェムの首にあるタトゥーをクレアが見るカットなど)が張られていて、後半これらが物語上重要な意味を帯びてくる。

ベン・アフレックが演じるダグは、父親が刑務所、母親がヤク中で首つり自殺(彼自身は失跡したと思っていた)など少年時代の消すことのできない不幸な生い立ちを背負って生きている。物語冒頭で銀行強盗した際に支局長だったクレアを誘拐しのちに彼女と恋仲になるという複雑な役柄だが強面なベン・アフレックしか演じられないといってもいいハマリ役でとっても魅力がある。

物語の序盤から多くの伏線が張られ、後半になるに従いそれらが順序良く回収されていくので、これだけの情報量を抱えながら見誤る心配がないのが凄い。仲間ジェムと口論になる場面で明かされる彼が9年間服役した訳や父親スティーブンと花屋ファーギーとの確執、そして明かされる母親失跡の謎。最後に爆発するファーギーへの怒り。FBIアダムからクレアに知らされる“ダグのもうひとつの顔”、“最後の仕事”を前に現れるクリスタとの関係など多数の登場人物が抱える消し難い過去にスポットを当ててみせる余裕すらある。このように見逃せない場面や考えさせられる場面が目白押し。それらが複雑に絡み合い、中盤の緊迫したカーチェイスや最後のレッドソックス本拠地フェンウェイ・パークを舞台にした大銃撃戦などアクションシーンに厚みを増していく。

ジェムがハチの巣にされ絶命した後で、双眼鏡に映るFBIに囲まれたクレアとの会話が泣ける。“よく晴れた日”の合言葉で、すべてを理解するダグ。そして、愛した人クレアへ残した贈り物と同じ地球のどこかで人生をやり直しているダグのシルエットが映り、映画は幕を下ろす。久しぶりに手に汗握り、絶えず緊張が走る物語。最後も希望と救いに着地して終わるので、観賞後非常に満足できる結末だと思います。

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