映画『キャラメル』サークルメンバーレビュー ネタバレあり


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キャラメル
監督:ナディーン・バラキー監督
主演:アル・マスリー、ジョアンナ・ムカルゼル、ジゼル・アウワード

キャラメル [DVD]

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Caramel (Original Soundtrack)

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ほんのり甘くてほろ苦く、ときにヒリヒリと痛い。これは、自由だけど不自由、不自由だけど自由な女たちの物語である。
タイトルから連想するのは、香ばしいカラメルの匂いとスイートなキャラメルの味だ。ところが、映画の舞台のレバノンでは、キャラメルはそんなに「甘い」もんじゃない。イスラム教のこの国では、女性の脱毛にキャラメルが使用される。熱を加えて飴状に伸ばし、熱々のうちに肌にくっつけ、ひと息にべりっと剥がす。そう、キャラメルは、甘くて香ばしいだけじゃない、女たちの「痛み」そのものでもあるのだ。

とあるレバノンのヘアサロンを舞台に、さまざまなバックボーンとそれぞれの痛みを抱えた5人の女たちが集まる。不倫の恋真っ只中のサロンの店主、レズっ気のあるアシスタント、姉の介護に勤しむ初老の婦人、モデルへの道をあきらめきれないアラフォー・レディー。「幸せになりたい__」。誰もが持つささやかな望みなのに、手が届きそうで届かない。彼女たちの行く手を阻むものは何か。束縛、執着、嫉妬、しがらみ…そこに名前をつけようとすればいろいろあるけど、実は「女であること」そのものなのかもしれない。自由にあこがれながらも、どこか不自由で不完全な女たち。彼女たちの存在は悲劇的かと言うと、実はそうでもないのだ。女とは、自分のその不完全さ、どうしようもなさをカラッと笑い飛ばせちゃうほどの軽やかさとしたたかさを持つ生きものだったりするのだ。

髪を切る。鼻歌を歌う。秘密を共有する。例えばそんなちょっとしたことで執着から逃れ、「軽やかさ」を身にまとう彼女たちは、見ていてすがすがしいくらいだ。ラストシーン、長い髪をばっさりとショートにして街を歩く彼女のうちに、限りなく軽やかな女たちの姿を見た気がした。ときに豪胆で、繊細かと思いきや意外と図太くたくましい存在、それがすなわち「女」なのである。晴れたり曇ったり、ちょっとしたお日様の加減や月の満ち欠けによってくるくると状況が変わる。キャラメルの甘さに苦みと痛みが加わって、マーブル模様の螺旋を描いていく。

Sukkar banat aka Caramel

映画の持つ飴色の雰囲気と薄ピンクの色彩、ざらざらとした粒子の粗い画面。監督にして主演のバラキー監督は、「色」の感覚にも鋭い感性を発揮している。この映画に甘いスイーツのようなフェミニンさを期待するならば、いい意味で裏切られるだろう。むしろ、リアルで乾いていて、「生」っぽい。それでもいい匂いと味のする、スイート&ビターな映画なのだ。

(文章:ぴーこ 構成:汐月歩夢)

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