12色物語 坂口尚著 講談社漫画文庫

12色物語 (講談社漫画文庫)

僕は、手塚治虫氏が設立した虫プロ出身のアニメーターであり、その後漫画家に転身した坂口尚(故人)氏の漫画が大好きである。マニアではないので全部を所持しているわけではないが、代表作である『石の花』、『VERSION』などは購入済み。今回紹介する『12色物語』は短編集。中でも一番好きな作品は『紫の炎』。学生の時に好きな人の思い出とともに木に刻んだ相合傘とイニシャル。やがて時は流れ、森は伐採され、木は枝を落とされ、家具になり、持ち主は変わり、アンティークショップで名前を刻んだ当時の恋人と7年ぶりに再会するというハートフルな物語。現実にはありえない話だとは思いますが、必要最低限の台詞と絵だけで時間の流れをみせていくという描写が見事。コマを追いながら台詞は読む者にゆだねられているところが好きです。初恋のころの感情が湧き上がる寓話。絶版も多いので、手軽に入手できる作品が少ないが、戦争を描いた骨太の作品『石の花』などから夏休みに読んでみることをおすすめ。

石の花 上 (光文社コミック叢書“シグナル” 11 坂口尚長編作品選集 1)

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坂口尚　Wikipedia
坂口尚の小部屋

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