第9地区 群馬映画研究会 新作映画批評 ネタバレあり

District 9

台湾への結婚式を控えANAの機内上映プログラムにて話題の『第9地区』を観賞。
痛快な娯楽映画でブラックユーモアが効いていて面白かった。

あらすじ(ウィキペディア)

南アフリカ共和国ヨハネスブルク上空に突如宇宙船が出現。しかし、船が故障してしまったため船内の者たちは地球に降りてくる。28年後、乗船していたエイリアンであるエビ(外見がエビ[=PRAWN]に似ているため)たちは地上に移り、隔離地区である第9地区で難民として地球人と共存していた。そこは人間とエビの争いが絶えないため、MNU (英:MULTI-NATIONAL UNITED) と呼ばれる超国家機関によって管理・監視されていた。MNUの社員であるヴィカスは、エビたちを彼ら専用の居住区域である第10地区に移住させ、地区からの立ち退き要請の同意を得るため第9地区を訪れるが、その道中に見つけた謎の液体を浴びてしまい…。

あらすじだけ読むとB級テイスト満載。でもアカデミー賞候補だし、前評判も高かったので公開前から見たい作品であった。物語冒頭 突如出現した巨大UFO飛来の映像とともに、ニュース映像や野次馬のコメントがインサートされてドキュメンタリータッチで物語が展開されていく。最初は状況把握できず物語を追うのがしんどかった。機内上映だと周りの騒音が気になったり、機長のアナウンスで映像止められたり、スッチーが機内食やドリンクを運んでくるときに見とれたりするじゃん?そんなの、俺だけかなぁ・・・。

話は映画の感想に戻って、コメントを寄せている人々の台詞を読んでいると、どうやら“ある人物”がエイリアンと勇敢に戦って亡くなっているような話をしている、と同時に画面はエイリアンがいる共同居住区 第9地区に向かう“ある人物”へ注がれる。それが、超国家機関MNUから強制収容所がある第10地区へ移送する計画を託されたのがお調子者で頼りない男ヴィカスだ。

District 9 - Press Kit Photo

ヴィカスはスラム化した第9地区でエイリアンたちに都合のよいことを言っては武器を取り上げ、立ち退き文書にサインを迫っていた。そんな中で、エイリアンが隠し持っていた謎の液体を浴びてしまう事件が起きる。物語はこの事件をきっかけに大きく様相が変化していく。前半部分で作品に乗り切れないと感じてしまった人でもここまで我慢してみてほしい。最後、80年代ロボットアニメで育った大人が拍手をしたくなる迫力のパワーローダー戦まで用意されているのだから。

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謎の血液を浴びたことにより、次第にエイリアンの姿に豹変していくヴィカス。ミイラ取りがミイラになったことで、視点が逆転。自らが第9地区に住まう立場へ追いやられる。物語中盤での視点の逆転により、この作品が内包していた真の姿が浮かび上がってくる。SF映画の衣をまといながらも社会風刺が効いていて加速度的に予測不能の面白さが広がっていく。見た後に、忘れられない何かを残してくれる映画、それが『第9地区』だと思います。

第9地区 - goo 映画
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