スタジオジブリ最新作映画『借りぐらしのアリエッティ』 新作映画批評 ネタバレあり 群馬映画研究会課題映画

真夏の悪夢『エアベンダー』の感想を先に書いてしまいましたが、スタジオジブリの最新作『借りぐらしのアリエッティ』も公開初日に観てきました。映画館はジブリの新作ということもあり、朝から親子連れで混雑。


あらすじ(ウィキペディアより)
小人の少女・アリエッティは、郊外にある古い屋敷の床下で、人間の生活品を借りながら、両親と密かに慎ましく暮らしていた。そんなある日、その屋敷に引越してきた少年・翔に自分の姿を見られてしまい…。

最後のアリエッティとの別れのシーンにはきっと胸を熱くする人もいるであろう。全体的に起承転結がハッキリとしている良作(瑠沙は涙こらえきれず号泣)で、避暑地に病気療養に来た心臓の手術を控えた少年と借り暮らしでひっそりと生きる小人の少女との禁じられた出会い(恋愛感情にも近い)をひと夏の思い出として描いていく。初期の宮崎駿作品のカラーに近く、絵で見せることに終始し説教臭くないのがよろしい。翔が語る最後の台詞は鳥肌ものの恥ずかしさなので、赤面するか涙するかは観ている人の感性によると思う。

全体的に文句を言うレベルではないが、同じジブリ作品でも宮崎駿監督と他の監督を立てた時の決定的な違いは冒頭からの推進力の差。宮崎駿監督の作品はとにかく冒頭の立ち上がりが早く、物語が加速度的に面白さを増していく。『借りぐらしのアリエッティ』は全体的に94分という劇場からも歓迎される回転率の良い映画でありながら、“人間に見られてはいけない”という小人の掟が邪魔をして、アリエッテイと翔がきちんと出会うまでに時間を割いているので、前半部分の盛り上がりが少ないのと、ジブリ作品全般に言えるのですが声優を職業としている人たちを毛嫌いして起用していないので一部の役者の台詞が聞きとり難い。あと観ているときは音楽のつけ方が一辺倒のような気がしたが、そこはあまり気にしなくてもいいかも。逆にオープニングで役者の名前が出るのが気に入らなかった。あれは夢を壊すので罪。せっかく俳優を起用しているのだから『えっ!、あの人があの役で!!』と最後までお楽しみはとっておいて観客を驚かすほうがよかったのでは?!もったいない。

ジブリ独特のパステル調の溶け込むような背景画は全編にわたって美しく、カラスや猫など動物描写の細やかさや人間と小人の対比などジブリ生え抜きのアニメーターで最年少監督の座を射止めた米林監督の手腕はさすがと唸った。エピローグ付きのエンディングに流れる協力スタジオには、『エヴァンゲリオン』のガイナックス、『カウボーイ・ビバップ』のボンズなどの名前も・・・、最後まで子供を退屈させず席を立たせない絵力と工夫は見事。

あと、超個人的にアリエッティのイラストが瑠沙に似すぎているのが笑えた。次世代のジブリを知る意味でもおすすめです。

【関連リンク】
借りぐらしのアリエッティ公式サイト

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師匠が輝いていたころ 

借りぐらしのアリエッティ - goo 映画
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